東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)214号 判決
原告主張の本件審決の取消事由の存否について検討する。
原告は、判断遺脱の違法があると主張するが、審決は、指定商品の類否について、本件商標の指定商品中、「化粧品、香料類」と引用A商標の指定商品とは、互に同一又は類似の商品と認めうるところであるが、残余の「せつけん類、歯みがき」は、商品の用途・品質等を異にする非類似の商品と判断するのが相当である、と説示しているのであつて、本件商標のすべての指定商品について、判断し、それにそう結論を出しているから、結局、本件審決には判断遺脱の違法はないと解することができ原告の右主張は理由がない。
次に、本件商標が「ワイキキパール」の全体を不可分一体のものとして把握されるべきものか否かについて考察する。
成立に争いのない甲第四号証の一ないし八及び弁論の全趣旨によれば、旧第三類「香料及び他の類に属しない化粧品」あるいは現行第四類「化粧品その他本類に属する商品」を指定商品とする第三者の有する商標権として、次のものが独立の商標登録をされていることが認められる。
<1> 昭和二四年二月二三日出願 「パールスター」
同年九月二八日 出願公告
登録第三八三〇七二号
<2> 昭和二六年九月一五日出願 「コゼツトパールフエイス」
昭和二七年一〇月三日出願公告
登録第四二五〇〇四号
<3> 昭和二七年七月一五日出願 「パールゲン」
昭和二八年四月九日出願公告
登録第四三一六一九号
<4>昭和二八年一月二七日出願 「モンパール(MONPEARL)」
同年一一月二六日出願公告
登録第四四五〇三七号
<5> 昭和三五年三月二四日出願 「ジヤンパール」
同年九月二四日 出願公告
登録第五七一〇四八号
<6> 昭和三五年七月二二日出願 「パールムード」
昭和三七年一一月八日出願公告
登録第六一七三五一号
<7> 昭和二九年二月二〇日出願 「キスミーパールホワイト」
同年一〇月一四日出願公告
登録第四六〇一九七号
<8> 昭和二九年二月二〇日出願 「キスミーパールスキン」
同年一〇月一四日出願公告
登録第四六〇一九八号
また、成立に争いのない甲第五号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、被告会社の元代表者佐々木梅治は、旧第三類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、次の商標を独立の商標として出願し、登録を受けていることが認められる。
<9> 昭和二四年一一月一九日出願 「パール化学研究所」
昭和二五年四月二一日出願公告
登録第三九〇八八一号
<10> 昭和二九年一二月二一日出願 「パールクラウン(PEARLCROWN)」
昭和三〇年五月一九日出願公告
登録第四七一九八七号
<11> 昭和二九年一一月三〇日出願 「マダムパール(MADAMPEARL)」
昭和三〇年六月三日出願公告
登録第四七二一二二号
さらに、成立に争いのない甲第一〇号証の一ないし二〇の各一、二によれば、被告は、現行第四類「せつけん類、歯みがき、化粧品、香料類」又はその一部を指定商品として、次の商標を独立の商標として出願し、登録を受けていることが認められる。
<12> 昭和三六年九月三〇日出願 「IMPERIAL PEARL」
昭和三七年七月五日出願公告
登録第六〇五一三三号
<13> 昭和三九年一一月二七日出願 「Pearl FIeurier」
昭和四一年三月二八日出願公告 (但し、筆記体)
登録第七二二五六五号
<14> 昭和三九年一一月二七日出願 「Pearl Jolietette」
昭和四一年三月二八日出願公告 (但し、筆記体)
登録第七二二五六六号
<15> 昭和四一年四月二二日出願 「パール リツチ(PearlRich)」
昭和四二年九月四日出願公告 (但し、欧文字は筆記体)
登録第七六七六三四号
<16> 昭和四一年四月二二日出願 「パール ミンク(PearlMink)」
昭和四四年七月三一日出願公告 (但し、欧文字は筆記体)
登録第八五七九四二号
<17> 昭和四一年一二月一四日出願 「レードパール」
昭和四四年八月二一日出願公告
登録第八五七九四四号
<18> 昭和四四年一二月二九日出願 「パールサーフイン(PEARLSURFRIDING)」
昭和四六年一月二〇日出願公告
登録第九二二一六七号
<19> 昭和四五年三月三一日出願 「ロイターパール」
昭和四六年四月三〇日出願公告
登録第九四五二五四号
<20> 昭和四五年六月二日出願 「ポパール」
昭和四六年九月二〇日出願公告
登録第九七二八二〇号
<21> 昭和四五年一〇月八日出願 「クインパール」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三四九号
<22> 昭和四五年一〇月八日出願 「キングパール」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五〇号
<23> 昭和四五年一〇月八日出願 「パールハイセンス」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五一号
<24> 昭和四五年一〇月八日出願 「パールマン」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五二号
<25> 昭和四五年一〇月八日出願 「パールガール」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五三号
<26> 昭和四五年一〇月八日出願 「ミスターパール」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五四号
<27> 昭和四五年一〇月八日出願 「ミセスパール」
昭和四七年一〇月一三日出願公告
登録第一〇二六三五五号
<28> 昭和四六年二月三日出願 「ラピスパール」
昭和四七年一一月二四日出願公告
登録第一〇三三一三六号
<29> 昭和四六年一〇月二五日出願 「パールコレクシヨン」
昭和四八年一月二四日出願公告
登録第一〇四六〇七七号
<30> 昭和四六年一〇月二五日出願 「パールクリスタル」
昭和四八年一月二四日出願公告
登録第一〇四六〇七八号
<31> 昭和四六年一〇月二五日出願 「クリスタルパール」
昭和四八年一月二四日出願公告
登録第一〇四六〇七九号
以上の登録商標は、いずれも「パール」とその他の文字部分との結合から成つているものであるが(但し、前記<2>は「パールフエイス」のほかに「コゼツト」がある。)、「パール」とその他の文字部分とでは、その字数、語調の点において、さしたる軽重の差は認められない。このことは、欧文字の部分についても異ならない。ところで、もし、このような構成の商標から単なる「パール」の称呼、観念が生ずるとするならば、指定商品も相互に同一又は類似であるから、右各登録商標は、互に類似の商標となり、いうまでもなく引用A商標とも類似のものとされるはずである。しかるに、多数の右各登録商標が類似の点を問題とされることなく、併存しているところをみると、化粧品等のこの種指定商品の取引者需要者間においては、ひろく、引用A商標の出願前後から現在に至るまで、前記各登録商標にみられる構成の商標に接する場合、全体を不可分一体のものとして把握することにより、それぞれ十分に自他商品の識別をしているものとするのが相当である。
ところで、本件商標を考察すると、それは「ワイキキ」と「パール」の結合標章であるが、別紙第一のとおり、「ワイキキパール」の片仮名文字を一連に横書きにしてなり、各文字は同じ書体、同じ大きさであり、「ワイキキ」と「パール」との間に間隔はないことが明らかである。したがつて、両者は字数、語調において格段の差があるものではなく、そのいずれに軽重があるというものでもない。また、「ワイキキパール」と一連に称呼しても冗長にわたるわけではなく、自然に称呼されうるものである。
本件商標について右に考察したところと、「パール」とその他の文字部分との結合からなる多数の商標が、化粧品等の取引に関して、不可分一体のものとして把握され、自他商品識別の機能を果している前記の事情とを併せ考えると、本件商標は、その指定商品の取引者、需要者の間においては、「ワイキキパール」と不可分一体に称呼し、観念されると認めるのが相当であつて、その一部の「パール」部分を分離し、これを要部としてとらえるべきものではない。結局、本件商標は、審決引用の各商標とは称呼、観念、外観のいずれにおいても類似しないものというべきである。
被告は、本件商標中の「ワイキキ」部分は、化粧品、香料類に関して産地・販売地表示であつて識別力はなく、本件商標中、自他商品識別標識として特に印象の強い部分は、「ワイキキ」を除いた「パール」部分であるから、本件商標からは、単に「パール」の称呼をも生ずると主張する。
「ワイキキ」は、ハワイ諸島オアフ島、ホノルル市の南東部にある著名な観光保養地であるが、昭和四四年ころ以降、同所において、ハワイ特産の花香水が「ワイキキ」の代表的土産品の一つとして販売されている(東京高等裁判所昭和五二年行ケ第一八四号、昭和五三年六月二三日判決参照)という意味で、香水等の化粧品に関して、「ワイキキ」を産地・販売地表示ということができよう。
しかしながら、右事実は、普通に用いられる方法で表示された「ワイキキ」のみからなる商標が、香水等の化粧品に関して、識別力がないというにとどまり、「ワイキキ」と「パール」が調和ある結合をした本件商標「ワイキキパール」が不可分一体のものとして把握され、自他商品識別力を有するという前記の認定を妨げるものではない。
また、被告は、原告が登録例として挙げるものは、いずれも「パール」と結合している語が、「スター」、「ゲン」、「モン」、「ジヤン」など指定商品との関係で、それ自体識別力のある語である、と主張する。
しかし、「パール○○」、「○○パール」という商標が不可分一体に把握されて自他商品識別力を有する場合には、「パール」と結合している他の語が指定商品との関係で、独立しても識別力のある場合に限るとすべき合理的な理由は見出しえない。のみならず、商標として登録され、現に存在している前記認定の被告の商標中、例えば、<24>「パールマン」、<25>「パールガール」、<26>「ミスターパール」、<27>「ミセスパール」において、「パール」と結合している「マン」、「ガール」、「ミスター」、「ミセス」の語は、化粧品等の指定商品に関して、用途区分を表示するものであり、それ自体識別力がある語とはいえない。したがつて、被告の右主張は理由がない。
なお、被告は、「パール」とそれ自体識別力のない語とを結合した「NEWPEARL(ニユー パール)」、「PearlColour(パール カラー)」、「パールブリユー」、「パールシルバー」などの商標は、引用A商標「パール」の連合商標として登録されている、と主張するが、そのような事実があるからといつて、本件商標「ワイキキパール」が不可分一体に把握され、自他商品識別力を有するという前記の認定に影響を及ぼすものでないことは、すでに述べたところから明らかであろう。
右のとおりである以上、本件商標は、「ワイキキパール」と不可分一体に把握認識すべきものである。したがつて、その余の点について判断するまでもなく、本件商標と引用A商標が類似するとして本件商標の登録を無効(但し、指定商品中「化粧品、香料類」について)とした本件審決は違法というべきである。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。
〔編註その一〕本件に関する商標は左のとおりである。
第一
<省略>
第二
<省略>